アニメの全セリフ -ガンダム、ジブリ、鬼滅の刃など-

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秒速5センチメートル 新海誠作品 全セリフとコメント

秒速5センチメートル 全セリフとコメント

秒速5センチメートル 全セリフとコメント

【前文コメント】

想いは永遠に。
それを願う心は多々あれど、叶う事など一切ない。
人は願いの強さゆえに、捨てきれない過去を抱えることがある。
過去を糧に今と未来を強く生きるのか、過去を振り返り思い出に浸り、今の自分を慰めつつ生きるのか。
ここには2人の人間の人生が描かれている。
男女で比較される物語ではあるが、男女の違いではない。
人と人の違いなだけ。

 

 

秒速5センチメートル 全セリフとコメント

 

 


秒速5センチメートル 第一話 「桜花抄」

明里「ねえ、秒速5センチなんだって。」
貴樹「え?なに?」
明里「桜の花が落ちるスピード。秒速5センチメートル。」
貴樹「うん、明里そういうことよく知ってるよね。」
明里「なんだかまるで雪みたいじゃない?」
貴樹「そうかな。」
貴樹「ね。待ってよ。明里。」
明里「貴樹君、来年も一緒に桜、見れるといいね。」

 

明里から貴樹への手紙
遠野貴樹さまへ
大変ご無沙汰しております。こちらの夏も暑いけれど、東京に比べればずっと過ごしやすいです。でも、今にして、思えば、私も東京のあの蒸し暑い夏も好きでした。解けてしまいそうに熱いアスファルトも、陽炎の向こうの高層ビル、デパートや地下鉄の寒いくらいの冷房も。私たちが最後にあったのは小学校の卒業式でしたから、あれからも半年です。ね、貴樹君、私のこと、覚えていますか。

 

明里から貴樹への手紙
前略、貴樹君へ。お返事ありがとう、うれしかったです。もうすっかり秋ですね。こちらは紅葉がきれいです。今年最初のセーター一昨日私渡しました。

 

先輩「遠野君。」
貴樹「先輩。」
先輩「なに?ラブレター?」
貴樹「違います。」
先輩「ごめんね。全部お願いしちゃって。」
貴樹「いいえ、すぐ終わりますから。」
先輩「ありがとう。ね、転校しちゃうってほんと?」
貴樹「はい、三学期いっぱいです。」
先輩「どこ?」
貴樹「鹿児島です。親の都合で。」
先輩「そっか。さびしくなった。」

 

明里から貴樹への手紙
最近は部活で朝が早いので、今のこの手紙は電車で書いています。この前、髪を切りました。耳が出るぐらい短くしちゃったから、もし会っても、わたしってわからないかもしれませんね。

 

貴樹「ただいま。」
貴樹の母「おかえり。」

 

明里から貴樹への手紙
貴樹君もきっと少しずつ変わっていくのでしょうね。

 

明里から貴樹への手紙
拝啓。
寒い日が続きますが。お元気ですか。こちらはもう何度か雪が降りました。私はそのたびにものすごい重装備で学校に通っています。東京は雪はまだだよね。引越してきてからも、ついくせで、東京の分の天気予報まで見てしまいます。

 

友人「雨でも降らないかなぁ。」
友人「ふらなくてもきついぜ。」
貴樹「なあ、栃木って行った事あるか?」
友人「あ?どこ?」
貴樹「栃木。」
友人「ない。」
貴樹「どうやって行くのかな。」
友人「さあ、新幹線とか。」
貴樹「遠いよな。」
先輩「一年!」
貴樹たち「はい!」

 

明里から貴樹への手紙
今度は貴樹君の転校が決まったということ、驚きました。
お互いに昔から転校には慣れているわけだが、それにしても、鹿児島だなんて。
今度はちょっと遠いよね。いざというときに、電車に乗って会いにいけるような距離ではなくなってしまうのは、やっぱり、少し、ちょっと寂しいです。どうか、どうか、貴樹君が元気でいますように。

 

明里から貴樹への手紙
前略、貴樹君へ。
3月4日の約束、とてもうれしいです。会うのも1年ぶりですね。なんだか緊張してしまいます。うちの近くに大きな桜の木があって、春にはそこにも多分、花びらが秒速5センチメートルで地上に降っています。貴樹君と一緒に春もやってきてくれればいいのにって思います。

 

友人「遠野、部活行こうぜ。」
貴樹「あ、あのさ、俺、今日、ちょっと部活だめなんだ。」
友人「引越しの準備か?」
貴樹「そんなとこ。悪いな。」

 

明里から貴樹への手紙
私の駅まで来てくれるのはとても助かるのですけど、遠いので、どうか気をつけてきてください。約束の夜七時に駅の待合室で待っています。

 

貴樹の独白
明里との約束の当日は昼過ぎから雪になった。

 

明里「ね、貴樹君、猫、チョビだ。」
貴樹「こいついつもここにいるね。」
明里「でも、今日は一人みたい。ミミはどうしたの。一人じゃ寂しいよね。」

 

貴樹「あの本、どう?」
明里「なかなか。昨日一晩で40億年の分読んじゃった。「
貴樹「どのあたり?」
明里「アノマルかリスが出てくるあたり。」
2人「カンブリア紀。」
明里「私ハルチゲニア好きだな。こんなの。」
貴樹「まあ、似てるかも。」
明里「貴樹君はなんのかな。」
貴樹「オパビニアかな。」
明里「目が五つあるのだよね。」

 

貴樹の独白
僕と明里は、精神的にどこかよく似ていたと思う。
僕が東京に転校した一年後に、明里が同じクラスに転校してきた。まだ体が小さく、病気がちだった僕らは、グランドよりは図書館が好きで、だから、僕たちはごく自然に仲良くなり、そのせいで、クラスメートからはからかわれることもあるけど、でも、疑われれば不思議にそういうことはあまり怖くはなかった。僕たちいずれ同じ中学に通い、この先もずっと一緒だと、どうしてだろう、そう思っていた。

 

駅のアナウンス
新宿、新宿、終電です・・・

 

貴樹の独白
新宿駅に一人できたのは初めてで、これから乗る線も、僕にはすべて初めてだった。
ドキドキしていた。これから、僕は明里に会うんだ。

 

明里「あのう、篠原と申しますけど。あのう、貴樹君いらっしゃいますか。」
貴樹の母「明里ちゃんよ。」
貴樹「え?転校?西中はどうすんだ。せっかく受かったのに。」
明里「栃木の公立手続きするって。ごめんね。」
貴樹「いや、明里が謝ることないけど。」
明里「葛飾のおばさんのうちから通ってみたいって言ったんだけど、もっと大きくなってから じゃないとだめだって。」
貴樹「分かった。もういいよ。もういい。」
明里「ごめん。」

 

貴樹の独白
耳が痛くなるぐらい、押し合った受話器越しに明里が傷つくのが手にとるように分かった。でも、どうしようもなかった。乗り換えのターミナル駅は、帰宅をはじめた人々で、誰の靴でも、雪の水を吸って、ぐっしょりと濡れっていて、空気は雪の日の都市独特のにおいに満ちて、冷たかった。その瞬間まで、僕は電車が遅れるなんて可能性を考えもしなかった。不安が急に大きくなった。大宮駅を過ぎてしばらくすると、風景からはあっという間に建物が少なくなった。

 

貴樹「すみません。」

 

貴樹の独白
駅と駅との間信じられないぐらい離れていて、電車は一駅ごとに信じられないぐらい長い間停車した。
窓の外の見たこともない雪の声も、ちわちわと流れていた時間も、痛いような空腹も、僕をますます心細くさせていた。約束の時間を過ぎて、今頃明里はきっと不安になり始めていると思う。あの日、あの電話の日、僕よりもずっと大きな不安を抱えているはずの明里に対して、優しい言葉をかけることのできなかった自分がひどく恥ずかしかった。

 

明里「じゃ、今日でさよならだね。」

 

貴樹の独白
明里からの最初の手紙が届いたのはそれから半年後、中一の夏だった。彼女からの文名はすべて覚えた。約束の今日まで二週間かけて、僕は明里に渡すための手紙を書いた。明里に伝えなければいけないこと、聞いてほしいことがほんとうに僕にはたくさんあった。

 

貴樹の独白
とにかく、明里の待つ駅に向かうしかなかった。

 

明里から貴樹への手紙
貴樹君、お元気ですか。部活で朝が早いので、この手紙は電車で書いています。

 

貴樹の独白
手紙から想像する明里は、なぜか、いつも一人だった。電車はそれから結局二時間も何もない荒原に停まり続けた。たった一分がものすごく長く感じられ、時間ははっきりした悪意を持って、僕の上をゆっくりと流れていった。僕はきつく歯を食いしばり、ただ、とにかく泣かない様に耐えているしかなかった。明里、どうか、もう家に帰って行ってくれればいいのに。

 

貴樹「明里。」

 

貴樹「おいしい。」
明里「そう。普通のほうじ茶だよ。」
貴樹「ほうじ茶。初めてなんだ。」
明里「うそ、絶対飲んだことあるよ。」
貴樹「そうかな。」
明里「そうだよ。それから、これ、私が作ったから、味の保障はないんだけど。よかったら、食べて。」
貴樹「ありがとう、お腹すいてたんだ、すごく。」
明里「どうかな。」
貴樹「今まで食べたものの中で一番おいしい。」
明里「大げさだな。」
貴樹「ほんとだよ。」
明里「きっとお腹がすいてたからよ。」
貴樹「そうかな。」
明里「そうよ。」

明里「私も食べようと。引越し、もうすぐだよね。」
貴樹「うん。来週。」
明里「鹿児島か。」
貴樹「遠いんだ。」
明里「うん。栃木も遠かったけどね。」
貴樹「帰れなくなっちゃもんね。」

駅員「そろそろ閉めますが、もう電車もないですし。」
貴樹「あ、はい。」
駅員「こんな雪ですから、お気をつけて。」
貴樹「はい。」

 

明里「見える?あの木。」
貴樹「手紙の木?」
明里「うん。桜の木。ねえ、まるで雪みたいじゃない?」
貴樹「そうだね。」

 

貴樹の独白
その瞬間、永遠とか、心とか、魂とかいうものが何処にあるのか、わかった気がした。十三年間生きていたことのすべてが分かち合えたように僕は思い、それから、次の瞬間、たまらなく悲しくなった。明里のその温もりを、その魂を、どうのように扱っていいか、どこへ持ってゆけばいいのか、それは僕には分からなかったからだ。僕たちはこの先もずっと一緒にいることはできないと、はっきりと分かった。僕たちの前には、未だ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間がどうしようもなく、横たわっていた。でも、僕をとらえたその不安は、やがて緩やかに解けて行き、後には、明里の柔らかな唇だけが残っていた。その夜、僕たちは畑の脇にあった小さな納屋で過ごした。古い毛布に包まり、長い時間話し続けて、いつの間にか眠っていた。朝動き始めた電車に乗って、僕は明里と別れた。

 

明里「あの、貴樹君は、きっとこの先も大丈夫だと思う。絶対。」
貴樹「ありがとう。明里も元気で、手紙書くよ、電話も。」

 

貴樹の独白
明里への手紙をなくなしてしまったことは、僕は明里に言わなかった。あのキスの前と後とでは世界の何もかもが変わってしまったような気がしたからだ。彼女を守れるだけの力がほしいと、強く思った。それだけを考えながら、僕はいつまでも窓の外の景色を見続けていた。

 

 

秒速5センチメートル 第二話 「コスモナウト」


花苗の姉「早苗、放課後もいくの?」
花苗「うん、お姉ちゃんは平気?」
花苗の姉「いいよ、でも勉強もちゃんとやりなさいよ。」
花苗「はい。」

花苗「よし。」

貴樹「おはよ。」
花苗「おはよ、遠野君」
貴樹「今朝も早いね。」
花苗「趣味だもん」
貴樹「海に行ってきたんだろう。」
花苗「うん。」
貴樹「がんばるんだね。」
花苗「そんなにでも。またね、遠野君。」
貴樹「ああ。」

先生「いいか、そろそろ決める時期だぞ。月曜までに提出だからなあ。ご家族とよく相談して決めるね。」
花苗の友人「佐々木さん東京の大学まで行くんだよね。」
花苗の友人「さすが、私は熊本の短大かな。早苗は?」
花苗の友人「うん。就職だっけ。」
花苗の友人「あんたほんと何も考えてないよね。」
花苗の友人「遠野のことだけね。」
花苗の友人「あいつ絶対東京に彼女いるよ。」
花苗「そんな。」

花苗の姉「まだうまく行かない?」
花苗「どうおしゃったのかな。」
花苗の姉「あんまり悩まないほうがいいよ。」
花苗の姉「そのうちまた乗れるわよ。」
花苗「お姉ちゃん、気楽でいいわよ。」
花苗の姉「なに焦ってんのよ。」
花苗「このままじゃ、卒業まで、言えないじゃない。」

花苗「ありがとう、お姉ちゃん。」
花苗の姉「送ってくわよ。」
花苗「ううん。カブで帰る。」

貴樹「澄田、今帰り?」
花苗「うん。遠野君も?」
貴樹「一緒に帰らない?」

花苗の独白
もし私に犬みたいな尻尾があったら、きっと、うれしさを隠し切れずに、ブンブンと振ってしまったと思う。あ、私は犬じゃなくてよかったななんて、ほっとしながら思って、そういうことに我ながらバカだなあと呆れて、それでも、遠野君との帰り道は幸せだった。最初から、遠野君はほかの男の子とは、どこか少し違っていた。

回想の貴樹「遠野貴樹です。親の仕事で転校には慣れていますが。この島にはまだ慣れていません。よろしくお願いします。」

花苗の独白
中二のその日に好きになって、彼と同じ高校に通いたくて、ものすごく勉強して、なんとか合格して、それでも、まだ、遠野君の姿を見るたびに、もっと好きになっていてしまって、それが怖くて、毎日が苦しくて、でも会えるたびに幸せで、自分でもどうしようもなかった。

花苗「遠野君、また同じの。」
貴樹「これ、うまいんだよ。澄田はなんかいつも真剣だよね、ものすごく。」
花苗「うん。」
貴樹「先行ってるよ。」
花苗「うん。これをください。」
店員「九十円ね。」
花苗「はい。」
店員「いつもありがとうね。」
貴樹「お帰り、なに買ったの?」
花苗「うん。迷ったんだけど。」

花苗の独白
遠野君はね時々誰かにメールを打っていて、そのたびにわたしは、それが私宛てのメールだったらいいのにって、どうしても、いつも思ってしまう。

花苗「カブ、ただいま。カブ、カブ、帰ってきたよ。」

貴樹の友人「遠野の彼女じゃん?」
貴樹「彼女とかじゃないよ。」

先生「学年で出していないのは澄田だけだぞ。」
花苗「すみません。」
先生「あのな、こう言っちゃなんだが、そんなに悩むようなことじゃないんだ。澄田先生はなんって言ってるんだ。」
花苗「いいえ。」
先生「どうしても決められないなら、県内の短大とかはどうなんだ?」
花苗「お姉ちゃんには関係ないのに。」

花苗の独白
だって、お姉ちゃんにねだってはじめたサーフィーも、一番大切だと思うあの人のことも、私はまだ、全然。

店員「いつもありがとうね。」
花苗「いいえ、それじゃ、また。」

花苗の独白
遠野君がいる場所に来ると、胸の奥が少し苦しくなる。

花苗「遠野君。」
貴樹「澄田、どうしたの。よく分かったね。」
花苗「へへ、遠野君の単車があったから。来ちゃった。いい?」
貴樹「うん。そっか。うれしいよ。今日は単車置き場で会えなかったからさ。」
花苗「私も。」

花苗の独白
彼は優しい。時々泣いてしまいそうになる。

花苗「ねえ。遠野君は受験?」
貴樹「うん。東京の大学を受ける。」
花苗「東京?そっか。そうだと思ったんだ。」
貴樹「どうして?」
花苗「遠くに来たそうだもん。なんとなく。」
貴樹「澄田は?」
花苗「私も明日のこともよく分からないんだよね。」
貴樹「多分、誰だってそうだよ。」
花苗「うそ、遠野君も?」
貴樹「もちろん。」
花苗「全然迷いなんてないように見える。」
貴樹「まさか、迷いばっかりなんだ。俺、できること何とかやってるだけ。余裕ないんだ。」
花苗「そっか。そうなんだ。」
貴樹「飛行機?」
花苗「うん。」

貴樹「すごい。」
花苗「時速5キロなんだって。南種子の打ち上げ場まで。」
貴樹「うん。」
花苗「今年は久しぶりに打ち上げるんだよね。」
貴樹「あ、太陽系のずっと奥まで行くんだって、何年もかけて。」

花苗の母「あんた、早苗の進路、ちゃんと相談に乗ってやりなさいよ。ぼんやりした子なんだから。」
花苗の姉「大丈夫よ。あの子はもう子どもじゃないんだし、私は昔もあるんだなあ。」
花苗「カブ、遠野君も分からないんだって。一緒なんだ、遠野君も。」

貴樹の独白
それは本当に想像を絶するくらい孤独な旅であるはずだ。本当の暗闇の中をただ直向きに、
ひとつの水素原子にさえめったに出会うことなく、ただ、ただ深遠にあるはずと信じる世界の秘密に近づきたい信念。僕たちはそうやって、何処まで行くのだろう、何処まで行けるのだろう。
出す宛てのないメールを打つくせが付いたのはいつからだろう。

花苗の姉「早苗、あんた進路決めたの?」
花苗「ううん、やっぱりまだわからないんけど、でもいいの、決めたの。一つずつできることからやるの。行ってくる。」

花苗の独白
あの日から、いくつかの台風が通り過ぎ、そのたびにこの島は少しずつ涼しくなっていた。砂糖木々を揺らす風はかすかな冷気を孕み、空がほんの少し高くなり、雲の輪郭が優しくなって、カブに乗る同級生たちが、下水ジャンプを羽織るようになった。私が半年振りに波の上に立てたのは、まだ夏がかろうじて残る、そんな十月の半ばだった。

花苗の友人「佐々木さんに山中に告白されたらしいよ。」
花苗の友人「さすがだな。」
花苗の友人「あれ?早苗、なんか今日うれしそうな。」
花苗の友人「遠野君となんかあったの。」
花苗「ふふ。」
花苗の友人「うそ!?」

花苗の独白
私だって、今日こそ、遠野君に告白するんだ。波に乗れた脅威がなければ、この先もずっと、ずっと、言えない。

貴樹「澄田。」
花苗「遠野君。」
貴樹「今帰り?」
花苗「うん。」
貴樹「そっか。じゃ、一緒に帰ろうよ。」

貴樹「あれ、澄田、今日はもう決まり?」
花苗「うん。」

貴樹「どうしたの?」
花苗「やさしくしないで。」
貴樹「え?」
花苗「ううん、ごめん、何でもないの。」

貴樹「調子悪い?」
花苗「うん、変だな。だめ?」
貴樹「うん、フラグの寿命なんじゃないのかな。これ、おさがり?」
花苗「うん、お姉ちゃんの。」
貴樹「家族で息づきしてなかった?」
花苗「してたかも。」
貴樹「今日はここに置かせてもらって。後で家の人に取りに来てもらって。今日は歩こう。」
花苗「あたし、一人で歩くよ。遠野君は先に帰って。」
貴樹「ここまで来れば近いから、それに、ちょっと、歩きたいんだ。」

花苗「遠野君、お願い。」
貴樹「どうしたの。」
花苗「ごめん、なんでもないの。ごめん。」
貴樹「澄田。」

花苗の独白
お願いだから、もう私に優しくしないで。

花苗の独白
必死に、ただ闇雲に、空に手を伸ばして、あんなに大きな塊を打ち上げて、気の遠くなるくらい向こうにあるなにかを見つめて。遠野君とほかの人が、違って見える理由が少しだけ分かった気がした。そして同時に、遠野君は私を見てなんていないんだってことに、私ははっきりと気づいた。だからその日、私は遠野君に何も言えなかった。遠野君は優しいけれど、とても優しいけれど、でも遠野君はいつも、私のずっと向こう、もっとずっと遠くの何かを見ている。私が遠野君に望むことはきっと叶わない。それでも、それでも、私は遠野君のことを、きっと明日も、明後日も、その先も、やっぱりどうしようもなく好きだと思う。遠野君のことだけを思いながら、泣きながら、私は眠った。

 

 

秒速5センチメートル 第三話 「秒速5センチメートル

 

貴樹の独白
今振り返れば、きっとあの人も振り返ると、強く、感じた。

明里の母「お正月までいればいいのに。」
明里「うん、でも、いろいろ準備もあるから。」
明里の父「そうだな。彼にもうまいもの作ってやれよ。」
明里「うん。」
明里の母「何かあったら、電話するのよ、明里。」
明里「大丈夫よ。来月には式で会うんだから。そんなに心配しないで。寒いから、もう戻りなよ。」

明里の独白
ゆうべ、昔の夢を見た。私も彼もまだ子どもだった。きっと昨日見つけた手紙のせいだ。

会社の人「水野さん」
水野「はい。」
会社の人「ミーティングいいかな?」
水野「はい。」

貴樹の独白
ただ生活をしているだけで、悲しみがすごくここに積もる、日に干したシーツにも、洗面所の歯ブラシにも、携帯電話の、履歴にも。

貴樹の独白
あなたのことは今でも好きです。3年間付き合った女性は、そうメールに書いていた。でも、私たちはきっと1000回もメールをやり取りして、たぶん心は1センチくらいしか近づけませんでした、と。

貴樹の独白
この数年間、とにかく前に進みたくて、届かないものに手を触れたくて、それが具体的に何を指すのか、ほとんど脅迫的とも言えるようなその思いがどこから湧いてくるのかも分からずに、僕はただ働き続け、気づけば、日々弾力を失っていく心がひたすら辛かった。
そして、ある朝、かつて、あれほどまでに真剣で切実だった思いがきれいに失われていることに僕は気づき、もう限界だと知った時、会社を辞めた。

貴樹と明里の2人の独白
昨日、夢を見た。
ずっと昔の夢。
その夢の中では僕たちはまだ十三歳で、
そこは一面の雪に覆われた広い庭園で、
人家の明かりはずっと遠くに疎らに見えるだけで、
降り積もる深雪には私たちが歩いてきた足跡しかなかった。そうやって、
いつかまた一緒に桜を見ることができると、
私も、彼も、何の迷いもなく、
そう思っていた。


タイトル「秒速5センチメートル


そして、ONE MORE TIME ONE MORE CHANCEへ

これ以上何を失えば 心は許されるの
どれ程の痛みならば もういちど君に会える
One more time 季節よ うつろわないで
One more time ふざけあった 時間よ

くいちがう時はいつも 僕が先に折れたね
わがままな性格が なおさら愛しくさせた
One more chance 記憶に足を取られて
One more chance 次の場所を選べない

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
向いのホーム 路地裏の窓
こんなとこにいるはずもないのに
願いがもしも叶うなら 今すぐ君のもとへ
できないことは もうなにもない
すべてかけて抱きしめてみせるよ

寂しさ紛らすだけなら
誰でもいいはずなのに
星が落ちそうな夜だから
自分をいつわれない
One more time 季節よ うつろわないで
One more time ふざけあった時間よ

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
交差点でも 夢の中でも
こんなとこにいるはずもないのに
奇跡がもしも起こるなら 今すぐ君に見せたい
新しい朝 これからの僕
言えなかった「好き」という言葉も

夏の想い出がまわる ふいに消えた鼓動

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
明け方の街 桜木町
こんなとこに来るはずもないのに
願いがもしも叶うなら 今すぐ君のもとへ
できないことはもう何もない
すべてかけて抱きしめてみせるよ

いつでも捜しているよ
どっかに君の破片を
旅先の店 新聞の隅
こんなとこにあるはずもないのに
奇跡がもしも起こるなら 今すぐ君に見せたい
新しい朝 これからの僕
言えなかった「好き」という言葉も

いつでも捜してしまう どっかに君の笑顔を
急行待ちの 踏切あたり
こんなとこにいるはずもないのに
命が繰り返すならば 何度も君のもとへ
欲しいものなど もう何もない
君のほかに大切なものなど

 

そしてエンディングへ

 

 

 

 

 

【コメント】

振り返って、電車が過ぎ去っても、そこに彼女はいなかった。
でも、それでいい。いや、彼にとってはそれがいい。
見ている者、第三者にとってはハッピーエンドがいいのかもしれないが、
彼、彼女が歩んできたこの十数年には、2人にしかわからない価値がある。
きっと忘れていく。
あたり前のこと。
人は、思い出の中だけでは生きていけない。
そして、思い出の中に戻ることもできない。

最後の場面で、2人が再会したとしても、
絶対に2人はうまくいかない。

思い出が消える速度はそれぞれ。
そのすれ違いがこれ以上2人を傷つけないように、

むしろ前を向いて歩いていけるように、
この物語は締めくくられている。

 

もう、

立ち止まり、

振り返ったとしても、

思い出に浸ることはあっても、

期待することだけは、二度とない。