アニメの全セリフ -ガンダム、ジブリ、鬼滅の刃など-

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雲のむこう、約束の場所 全セリフ 新海誠作品

雲のむこう、約束の場所 全セリフ 新海誠作品

雲のむこう、約束の場所 全セリフ 新海誠作品

 


雲のむこう、約束の場所 全セリフ 新海誠作品


藤沢浩紀:いつも何かを失う予感があると、彼女はそう言った。当時、まだ中学生だった僕には実感がもてるはずもなかったけれど。それでも、彼女のその言葉は不思議に僕の心をふるわせた。まだ戦争前、蝦夷(えぞ)と呼ばれた巨大な島が、他国の領土だった頃の話だ。

沢渡佐由理:すごーい…、飛行機!

藤沢浩紀:今はもう遠いあの日。あの雲のむこうには、彼女との約束の場所があった。

藤沢浩紀:あの頃、僕たちはふたつのものに憧れていた。

佐由理の友人:あと何分?
沢渡佐由理:まだ大丈夫よ

白川拓也:ほらっ
藤沢浩紀:あちっ、さんきゅ
白川拓也:ヒロキ、次バイトいつ行く?
藤沢浩紀:あぁ、明日まで部活だから明後日かな。タクヤは?
白川拓也:オレも明日の朝練で最後だから…、じゃあ明後日で決まりな
藤沢浩紀:ああ

藤沢浩紀:憧れのひとつは、同級生の沢渡佐由里で…、そしてもうひとつは、津軽海峡を挟んだ国境のむこうにそびえる、あの巨大な塔。いつだって、僕はあの塔を見上げていた。僕にとって大切なものが、あの場所には待っている気がした。とにかく、気持ちが焦がれた。

白川拓也:いつか…いつか、絶対に行くんだ。

後輩の女の子:白川先輩!
友人たち:先、行ってるぜ
白川拓也:ああ、わるい…
後輩の女の子:あ、あの、先輩達今日で引退だから…
後輩の女の子:渡したいものあるんです
後輩の女の子:ほらカナちゃん
カナちゃん:え、ちょちょっと…。あの、これ…

藤沢浩紀:で、断ったのか?いつもみたいに
白川拓也:うん
藤沢浩紀:一年の松浦か、あいつかわいいのに
白川拓也:じゃあ、ヒロキが付き合えよ
藤沢浩紀:はあ?
白川拓也:おまえだったらつきあうのかよ
藤沢浩紀:え、いや、なんでおれが?
白川拓也:お前、誰か好きな奴いるの?
藤沢浩紀:え、な、なんでいや、まあ確かにかわいい子だとは思うけどさ、つきあうって、俺、なにすればいいのか、よくわかんないしさ
白川拓也:お前が告白されたんじゃないだろ
藤沢浩紀:お前がきいたんだろ!

藤沢浩紀:沢渡…
沢渡佐由理:あ、藤沢君
藤沢浩紀:沢渡、帰り遅いんだな
沢渡佐由理:うん、練習してたら遅れちゃった
藤沢浩紀:ヴァイオリン?
沢渡佐由理:うん。藤沢君は白川君と一緒じゃないの?
藤沢浩紀:ああ、オレも部活寄っててさ
沢渡佐由理:藤沢君、時々一人で弓ひいてるね
藤沢浩紀:え、あ、オレ下手だからさ、雑念多いんだ

沢渡佐由理:藤沢君、春休み何か予定あるの?
藤沢浩紀:うん、タクヤと一緒にバイトするんだ
沢渡佐由理:え、バイト?いいなぁどこで?
藤沢浩紀:浜名の軍事下請けの工場、誘導弾組み立てたり
沢渡佐由理:ふうん、すごいなあアルバイトなんて。私は部活くらいだな…
藤沢浩紀:そうか
沢渡佐由理:うん

アナウンス:『次は中小国、中小国。中小国の次は大平に停車します』
沢渡佐由理:あ、もう着いちゃう。あのね、わたし昨日、こうやって藤沢君と一緒に帰る夢見たんだ。ばいばい、また新学期ね
藤沢浩紀:あ、ああ…

藤沢浩紀:こんにちわ…。やった、お茶の時間ですか
アニキたち:おう、こっち座れよ
藤沢浩紀:はい
白川拓也:おせえよヒロキ
藤沢浩紀:ごめん
工場のアニキA:ヒロキ、聞いたぜ
工場のアニキB:お前達、海自のチャッカー、盗んできたんだって?
白川拓也:だから…
白川拓也:違いますよ!
藤沢浩紀:…盗んだんじゃんじゃなくて、天が森で拾ったんですよ!
工場のアニキB:やっぱり盗んだんじゃねぇか
工場のアニキA:まぁ、最近はドローンを飛ばした訓練も多いから、大丈夫だろうけど、足がつかないように気をつけろよ
工場のアニキB:そうそう、ただでさえここは公安から目ぇつけられてるんだから…
岡部:人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇよ、仕事しろ、仕事
アニキたち:うーす
アニキたち:じゃあな
藤沢浩紀&白川拓也:はい
岡部:お前たちも、明日からちゃんと働きに来いよ。材料費以上にこき使ってやるからな
藤沢浩紀&白川拓也:はい…それじゃ失礼します
岡部:おう

藤沢浩紀:僕達がアルバイトを始めたのには、理由があった。まだ蝦夷が北海道と呼ばれ、この国の一部だった頃、津軽海峡の下にトンネルを掘るという計画があったそうだ。結局、それは南北分断によって中断されたんだけれど、このあたりの山中には、まだ工事の名残の廃駅やレールがところどころに残っている。僕たちはこの山頂にあるそういう廃駅のひとつで、去年からあるものを作っていた。米軍の下請け工場である蝦夷製作所で働くのはそのパーツ代を稼ぐためだ。手が届くほどの距離に見えているのに、行くことの出来ない、あの場所。僕たちはその見知らぬ島も、そこにそびえる巨大な塔も、どうしても目前に見てみたかった。

白川拓也:だいぶ雪が減ったなあ、早く再開したいな
藤沢浩紀:これでもう雪が降らなきゃね
白川拓也:とにかく、残りの材料をそろえないと、外装用のナノネットと、セルモーターもまだ揃ってないし、大物は超電動モーターだろ。最後にはケロシンも必要だし。明日からのバイトだけじゃ追いつかないかもな
藤沢浩紀:なんとかなるよ。夏休みもあるしさ
白川拓也:そうだよな

藤沢浩紀:だから、僕達はヴェラシーラと名付けたこの飛行機で、国境の向こうのあの塔まで飛ぼうとしいたんだ。

沢渡佐由理:また…同じ夢

白川拓也:沢渡?
沢渡佐由理:タクヤ君!

白川拓也:あのさ
沢渡佐由理:あの
白川拓也:あ、ゴメン
沢渡佐由理:ううん
白川拓也:ヒロキがさ!
沢渡佐由理:ヒロキ君が!
白川拓也:あ…、
沢渡佐由理:…私たち、二人だけで話したことってあんまりなかったよね
白川拓也:そうかもな…
沢渡佐由理:ねぇタクヤ君、物理好きなの?
白川拓也:え?ああ、この本?ちょっと興味があってさ
沢渡佐由理:すごいなぁ、わたしのおじいちゃんもね、物理学者だったんだって
白川拓也:へぇ、そっちのほうがすごいよ
沢渡佐由理:でも、会ったこともないんだけどね
白川拓也:南北分断?
沢渡佐由理:うん
白川拓也:そうか…
沢渡佐由理:ねぇ、タクヤ君たち、今もアルバイトしてるんでしょ?楽しい?
白川拓也:どうかな、怖いオヤジの工場だからさ、怒鳴られるしこき使われるし
沢渡佐由理:そんなに怖いの?
白川拓也:ねぶたの鬼みたいだぜ
沢渡佐由理:本当?
白川拓也:今度、見に来るか?
沢渡佐由理:え!?でも邪魔じゃない?
白川拓也:いや、ヒロキもきっと喜ぶからさ
沢渡佐由理:うん、行く行く!

沢渡佐由理:ねぇ、タクヤ君。おかしな話かもしれないけど、笑わない?
白川拓也:え、何?笑わないよ
沢渡佐由理:じゃあ話すね…あのね…

藤沢浩紀:お前、なに勝手なことしてんだよ
白川拓也:しょうがないだろ、そういう話の流れだったんだよ
藤沢浩紀:どうする
白川拓也:塔まで飛ぶことも言っちゃうか?
藤沢浩紀:そのことはまずいよ
白川拓也:だよなぁ、でも行き先聞かれたらどうする?
藤沢浩紀:うーん
沢渡佐由理:あの?
藤沢浩紀&白川拓也:はい
藤沢浩紀&白川拓也:は、は、は…
沢渡佐由理:ふふ

藤沢浩紀&白川拓也:こんちわー
岡部:おう、暑いな今日は…
沢渡佐由理:こんにちわ、お邪魔しまーす
岡部:や、すいません。え、えーといつもうちの馬鹿二人がお世話になってるみたいで…

藤沢浩紀:岡部さんってさ、独身だったけ?
白川拓也:いや、バツイチってウワサ聞いたぜ
藤沢浩紀:なーんか、分かる気がするな

沢渡佐由理:こんな場所があったんだ!ひろーい
藤沢浩紀:はあ…
沢渡佐由理:凄い、飛行機!?
藤沢浩紀:そうだよ
沢渡佐由理:はぁ、これ二人だけで作っているの?
白川拓也:うん、二年の夏から少しづるやってるんだ。さっきの工場でバイトしながら部品そろえて、岡部さんとかに相談しながらさ、なあ?
藤沢浩紀:うん…、まだまだ未完成なんだけどね
沢渡佐由理:凄いな…。ね、本当に凄い!!
藤沢浩紀:あ、ありがと

沢渡佐由理:ねぇ、飛行機いつごろ完成するの?
白川拓也:本当は夏休み中に完成させたいんだけどさ
藤沢浩紀:でも多分無理だよ。まだまだ時間がかかりそうなんだ。まあ年内が目標かな
沢渡佐由理:そうか、ねえ、あの飛行機でどこまで行くの?
藤沢浩紀:あの塔まで行くんだ
藤沢浩紀:あ…
沢渡佐由理:塔って、ユニオンの塔?
藤沢浩紀:うん
白川拓也:塔まで多分40分くらいで飛べると思うんだ
藤沢浩紀:国境をどう越えるかが問題なんだけどね。でもそれも考えがあるんだ
沢渡佐由理:凄い凄い。いいなぁ北海道!!
白川拓也:沢渡も、いくか?
沢渡佐由理:え、いいの?
藤沢浩紀:うん
沢渡佐由理:本当?うん行く、行きたい。わぁ、ありがとう
白川拓也:でも本当に飛べるか判らないぜ
藤沢浩紀:だいじょぶ、きっと飛べるよ
沢渡佐由理:うん。ねぇ、じゃあ、約束
藤沢浩紀:ああ
白川拓也:じゃあ、約束な
沢渡佐由理:うん

藤沢浩紀:あの頃は一生このまま、この場所、この時間が続く気がした。あこがれていた雲のむこうのあの塔は、僕にとって大切な約束の場所になった。あの瞬間、僕たちには恐れるものなんて何も無かったように思う。すぐ近くで、世界や歴史は動いていたんだけれど…。でもあのころは、汽車に漂う夜の匂いや、友達への信頼や、空気を震わすサユリの気配だけが、世界の全てだと感じていた。

ラジオ:『昨晩から今朝未明にかけ、津軽海峡沖から42.15線までの緩衝地域にかけて、米日軍とユニオン軍の小規模な武力衝突が行われました。それをうけ、警視庁は国内のウィルタ解放戦線などのテロ組織によるユニオン大使館へのテロ行動を警戒して3300人の警備要因を都内に配備することを発表しました。また航空各社、国鉄新幹線ともに手荷物検査の厳重化を更におし進める方針を発表し、航空、駅からはゴミ箱の撤去が順次行われています…』
岡部:おう

岡部:そりゃお前、ケロシンだって何だって金払えば売ってやるけどさぁ…。でもジェット燃料は高いぜ。素直にレシプロか、超電導モーターにしといたらどうなんだ?
白川拓也:うーん
岡部:あとわかるか?よろしくな

岡部:なぁ、だいたいなんでわざわざジェットエンジン使うんだよ?
藤沢浩紀&白川拓也:かっこいいから
藤沢浩紀&白川拓也:それだけかよ
白川拓也:ちょっと待てよ、他にもっと色々理由があっただろ
藤沢浩紀:えーと。あ、あれだ
藤沢浩紀&白川拓也:せっかく拾ったから
藤沢浩紀&白川拓也:違うだろ!
藤沢浩紀:なんだっけ…、二重エンジンにした理由。もっとちゃんとした訳があったんだよ
白川拓也:あ、あれだ…
藤沢浩紀&白川拓也:変形させたいから
藤沢浩紀&白川拓也:違うだろ!
岡部:なんでもいいからさ、お前達死ぬなよな。めんどくさいから…
岡部:ああ、お前ら夏休みにはいったら毎日来いよな
藤沢浩紀&白川拓也:はーい

沢渡佐由理:ねえ、本当に弾くの?
白川拓也:うん、放課後にいくからさ
沢渡佐由理:ねぇ、わたしあんまり上手じゃないよ
白川拓也:大丈夫、オレそういうの目の前で見たことないんだ。聴かせてよ
藤沢浩紀:オレも、聴きたいな
沢渡佐由理:うーん、緊張するなぁ…


■廃駅
藤沢浩紀:ナノネットは、レーダーを反射しないんだろ?
白川拓也:でも緩衝地帯を飛ぶんだぜ…いくらナノネットの外装でもさ、下手に飛んだらユニオンより先にまず米軍に見つかるよ
藤沢浩紀:やっぱりなるべく低く飛ぶしかないか。波と地形にまぎれてさ。早朝に出れば朝モヤにも隠れるし…
藤沢浩紀:蝦夷の地図ってあるの?
白川拓也:一番詳しいのでこれしかない。実際の地形は行ってみないとわからないから。上陸後は高度をとるしかないよ
藤沢浩紀:でも上陸さえしちゃえば、ユニオンのレーダーには捕まらないんじゃないか?ヴェラシーラの返す影は小鳥より小さいはずだろ
白川拓也:多分な。よほど運がなければ視認されるかもしれないけど…


藤沢浩紀:沢渡!
藤沢浩紀:まってて
沢渡佐由理:だ、大丈夫…、そんなに高くないから…きゃっ!?
沢渡佐由理:あ…私たち、前にも…あ
藤沢浩紀:よかった、間に合って…今、わっ!
白川拓也:大丈夫か?
沢渡佐由理:うん、ごめんね。ありがとう

藤沢浩紀:ははは!驚いたぜ
白川拓也:何すんだよ!
藤沢浩紀:わっ!はははごめん、ついさ…
白川拓也:なんだと!
白川拓也:お前はいったい何がしたいんだよ
藤沢浩紀:はは、そんなに怒るなよ
白川拓也:怒るぜ、お前はもうあがってくるな。行こうぜ沢渡
藤沢浩紀:タクヤ…。沢渡、何か言ってやってよ
沢渡佐由理:ふふ、ごめんねタクヤ
白川拓也:ヒロキがバカなんだよ。いいから行こうぜ
藤沢浩紀:タクヤ

沢渡佐由理:私ね、さっき一瞬だけ夢みてたんだ
藤沢浩紀:夢?どんな夢?
沢渡佐由理:忘れちゃったけど、でも、多分…あの塔の夢
白川拓也:嘘みたいな眺めだもんな、ユニオンは凄いよ
藤沢浩紀:塔の先、ほかの世界にまでつながっていそうだ
沢渡佐由理:はあっ…、夕陽、なかなか沈まないね

藤沢浩紀:本当に、あれは特別な夏だった。でも僕を囲む世界は、この先何度でも僕を裏切る。あれから三年、あの日を境に僕は沢渡には会っていない。

■アーミーカレッジ
富澤常夫:お客さんがきたけど、気にせずにね。ファーストフェイズ終了、次いこう
白川拓也:はい
白川拓也:次、濾過ステージ。セカンドフェイズ、開始します
研究員:指向性解像度は前回より25%プラスです
富澤常夫:いいね、今度こそいけるかな?アルゴリズム、うまく選んでいけよ
白川拓也:はい
研究員:白川、アルゴリズムは?
白川拓也:グループ抽出フィルタリングに手を加えました。エクスンツキノエの論文が元です
研究員:エクスンツキノエって、ユニオンのか?
白川拓也:はい
富澤常夫:何?どうやってそんなことを
白川拓也:待ってください。反応しだいに増強…
有坂:誰なんですか?
富澤常夫:初めて平行宇宙の実存を証明したユニオンの研究者よ。塔の設計者だっていわれてる
白川拓也:捕らえた!XY、YC、ZC方向に露出反応確認。分岐宇宙は5、いや、6あります
富澤常夫:6つか、同調ステージ開始。繋がってくれよ
有坂:サードフェーズ開始します。最も近い平行世界に、それぞれ接続アプローチ開始
白川拓也:はい
研究員:速い
有坂:白川クンが一番近い。接続可能領域まであと12エクサ。11エクサ、10、9.4、9.2….
白川拓也:つながりました
白川拓也:近接するひとつの分岐宇宙接続成功。露出反応安定しています
富澤常夫:よし、このまま変換ステージに移ろう
有坂:フォースフェイズ、平行世界との空間置換、開始します
軍人:あのらせんが塔なのか?
スーツ:そうです、中心の数インチの空間をこれから別の宇宙とおきかえます
有坂:半径60ナノ空間の異相変換確認。急速に拡大。まもなく肉眼で視認できます
スーツ:あの箇所だけ別の宇宙の組成でできたまったく別の空間です
軍人:蝦夷の塔にも同じことが?
スーツ:あちらは遥かに大規模ですが
スーツ:我々はまだ数度に一回、砂粒大の空間置換に成功する程度です
白川拓也:ダメだ
有坂:ダメです
有坂:露出反応減退、以上平行世界との接続をこれ以上維持できません
白川拓也:ふぅ
有坂:波動関数取れん。分岐宇宙、完全に消失。半径約1.3ミリの異相置換に成功しました

研究員たち:おつかれさまでした。
富澤常夫:お疲れさま
笠原真希:冨沢先生、白川くんあきました?
富澤常夫:あいたよ。…なんだ君ら、いつも一緒だなあ
笠原真希:先生が慣れるまでついててやれって、言ったんじゃないですか
富澤常夫:そうだっけ?あ、マキちゃん、僕明日から東京出張だから
笠原真希:研究報告会でしたよね?
富澤常夫:それもあるけど、例の鍵がみつかったみたいなんだ
笠原真希:鍵って、前先生がおっしゃってた?
富澤常夫:うん
富澤常夫:君ら脳科学チームは忙しくなるかもね
白川拓也:マキさん…

■アーミーカレッジ廊下
笠原真希:軍人さん、最近よく来るね
白川拓也:スーツのほう、多分NSAですよ
笠原真希:NSA
白川拓也:国家安全保障局
笠原真希:ふーん、テロの噂、最近多いもんね
笠原真希:今日はうまくいったの?
白川拓也:まだまだです。ぎりぎり肉眼で見える程度の置き換えがやっとで、ユニオンの塔には及びもつきません
笠原真希:それは仕方ないわよ。もともと基礎物理から大きくリードされちゃってるんだし…
笠原真希:蝦夷のあの写真、私も見たよ

■エレベーター内
白川拓也:分からないのは、異相変換がなぜ塔の周囲2キロメートルでとまっているかです
白川拓也:攻撃目的だとしたら、それじゃ意味がないし…
笠原真希:なにかの事故で機能が停止しているのか、それとも単にそれだけの実験施設なのかしら
白川拓也:あるいは異相変換自体が、設計者も意図しなかった機能の暴走なのか…。富澤教授は塔の機能を抑えこんでいるような、なんらかの外因があるんじゃないかって言ってますね

笠原真希:ね、白川くん、明日はなにしてるの?高校もお休みだよね?
白川拓也:ちょっと調べたいことがあるので…
笠原真希:図書館?
白川拓也:いえ、知り合いの工場に

岡部:見たいって、うちは見学施設じゃねーんだぞ!え?なに?
岡部:女の子?いくつの子?
白川拓也:知りませんよ。でも、まあ綺麗な人ですよ…多分
岡部:ああ、じゃあ待ってるからねー

笠原真希:へえー、すごいアンテナですね
岡部:ははは、ちょっとだけ非合法なものもまじってるんですけどね。これで結構、面白いところにも繋がるんですよ
笠原真希:へー

岡部:じゃあ、マキさんは脳の研究が専門なんですか?
笠原真希:はい。記憶とか睡眠とか夢とか…
岡部:タクヤと一緒の研究室ですよね?お前、塔の研究をやってるんじゃなかったっけ?
白川拓也:ええ、オレの方は塔の研究で、どういえばいいのかな、どちらも平行世界を扱う研究なんです
岡部:平行世界?
笠原真希:あの…、人が夜、夢を見るみたいに、この宇宙も夢を見ているんです。『こうであったかもしれない』っていうさまざまな可能性をこの世界は夢の中に隠していて、そのことを私達は平行世界とか分岐宇宙って呼んでいます。私の研究はその平行世界が人の脳や夢に及ぼす影響を調べることです。ユニオンのあの塔も同じものを観測してるって説が有力なんです。テクノロジーで平行世界が観測できるようになった一方で、生物の脳も太古から無意識のうちにそれを感知してきたのかもしれない。量子レベルで脳の中を行き来する分岐宇宙の情報が、ひょっとしたら人の予感や予知といったものの源泉なのかもしれない。そんな研究をしています。

岡部:へぇ、宇宙の見る夢なんて、なんかロマンチックですねぇ
白川拓也:ロマンチック?
岡部:何だよ!
笠原真希:いえ…
白川拓也:別に…
岡部:でも、マキさんご立派です。お若くして、政府諮問機関の研究員とは
笠原真希:いえ、そんな…でも私、塔に憧れていたからやりがいはあるんです
岡部:俺もですよ。実は憧れたなぁ
笠原真希:でも本当に凄いのは白川くんのほうなんです!最年少の外部研究員で一番熱心で
笠原真希:私、前からかっこいいなぁって
白川拓也:いや、そんな、俺なんて…全然

笠原真希:私、そろそろおいとましないと…。ごめんなさい、なんだか私ほとんど自分で食べちゃったみたいで…
岡部:タクヤ、市内までいくのか?
白川拓也:ええ、マキさんを送って
岡部:俺も乗せてってよ
笠原真希:え?
白川拓也:いいですよ
笠原真希:えぇーーー!

岡部:駅で降ろしてくれるか
白川拓也:岡部さん、帰らないんですか?
岡部:明日から仕事で東京なんだよ
白川拓也:岡部さん
岡部:ん?
白川拓也:お願いしてた事、考えてくれました?
岡部:何だっけ?
白川拓也:ウィルタのことですよ
岡部:ああ、お前もくどいな。それより研究室、頑張ってるみたいじゃないか。そっちがやりがいがあるんだろ?
白川拓也:そういうわけじゃ…。ただ、早く片付けちゃいたいんです、あの塔のことは

看護師:どうしました?
富澤常夫:いえ、東京からもあの塔が見えるとは思わなかったもので
看護師:ああ、時々そういう日があります。今日は空気が澄んでますから。…こちらです

看護師:そちらが、この病院にいらしてからの経過です
富澤常夫:中学三年の夏に発症。原因は不明、次第に睡眠時間が長くなり覚醒状態が一定期間維持できたのは最初の2ヶ月のみ。
この三年間眠り続けている…と。何らかの夢を見続けているわけですね
看護師:そういう脳波は記録されています
富澤常夫:ふうん…DNA鑑定は?
看護師:6枚目です
富澤常夫:…なるほどね。分断された血筋なわけだ。結構。でわ、こちらが厚生労働省からの要請書です
看護師:移送の日にちが決まり次第、正式に書類が届きます
富澤常夫:この手紙は?
看護師:患者さんが入院当初、書いていたもののようです
富澤常夫:読みました?
看護師:いえ
富澤常夫:蝦夷製作所…?

富澤常夫:このように、行く手で枝分かれしていく多元宇宙の偏りを検地することで、非常に高精度の未来予測が可能になります。私の研究室の最終的な目標もここです。これらは従来の理論モデルや確率論ではなく、あくまでも現実の未来の結果をもとにした情報であり、このことが政治・軍事の意思決定の場面に及ぼす影響は計り知れないでしょう。ただ、率直に言って、一方でユニオン側の量子重力論の応用技術は我々とは比較にならないほど高いレベルに達していると考えざるを得ません。蝦夷に建つあのシンボリックな塔の建設が始まったのは南北分断直後の74年、稼動が開始されたのは96年ごろと推測されていますが、設計の中心的役割を果たしたと言われているエクスン・ツキノエが本州の出身であることは我々連合側にとっては皮肉なことです。…さて、続いて実際に平行世界の情報を検地していくためのいくつかの新しい技術的試みについて説明します…

富澤常夫:態度の悪い奴がいるなと思ったよ
岡部:ちゃんと話は聞いてたぜ。要するにアレだろ、神サマの見ている夢を覗き見て、夢判断をしたいってことだろ
富澤常夫:まあ、だいたいあってる。なんだ岡ちゃん、興味があるの?
岡部:ちょっと予習したんだよ。それより今晩、久しぶりにどうだ?

富澤常夫:白川くんは優秀だよ。確かにいい素質がある
岡部:声かけてみてよかっただろう?
富澤常夫:うん。でも岡ちゃん、いつから学生の斡旋なんて始めたの?
岡部:いや…、あいつらはちょっと…特別なんだ
富澤常夫:あいつら?
岡部:ああ、もう一人、心配なのが東京に来てるはずなんだが、連絡が取れねぇんだよな…。奴ら二人で飛行機作ってたんだぜ
富澤常夫:そりゃ懐かしいね…なんだい、そのための上京?もっと違う用事かと思ったよ
岡部:なんだと思った?
富澤常夫:ウィルタの件
岡部:実はそうだ。そっちが本題。PL外核爆弾が手に入ることになった。入手経路は聞くなよ
富澤常夫:聞かなくてもだいたい分かるよ。…で、何?まさか塔効くかどうかってこと?
岡部:…そうだ
富澤常夫:そりゃあ効くんじゃない?塔の外装は一瞬で蒸発するだろうし、内部はナノネットの巨大なリボンで構成されているらしいんだが、これもたぶん燃えおきるだろうな。そうだね、PL外殻爆弾は最適かもしれない
岡部:そうか
富澤常夫:でもさ、ウィルタのそういう行動は開戦の機運を高めるよ、やめとけば?
岡部:だからやるんだ
富澤常夫:決定事項なの?
岡部:だいたいな。…開戦を望んでいるエライ人達がいっぱいいるからな
富澤常夫:君らの理念は南北統一じゃなかったのか?
岡部:今でもそうだぜ
富澤常夫:もったいない気はするけどなぁ。あれは連合側からは信じられないような技術の結晶だぜ?どうせただ建っているだけで現実的な影響はないんだし
岡部:隠すなよ、今は止まっているように見えるが塔は周囲の空間を裏返す強力な兵器である可能性がある
富澤常夫:知ってたのか
岡部:ああ
富澤常夫:僕はあの眺め、好きなんだけどなぁ
岡部:時々そういうロマンチックなヤツがいるよなぁ
富澤常夫:岡ちゃんさぁ、僕も聞いていいかな?
岡部:ん?
富澤常夫:暫く前、あの塔の秘密に繋がりそうな人間が見つかったんだ
岡部:へえ
富澤常夫:まだ十代の女の子だよ
岡部:へえ…それで?
富澤常夫:岡ちゃんの、知ってる子じゃないのか?

富澤常夫:しつこいかもしれないけど、彼女のこと、はっきりするまで白川君には内緒にしておいたほうがいい。仲が良かったのならなおさらだ
岡部:いずれバレるぜ?
富澤常夫:だとしても、今から悩ませる必要はないだろう。もう安全保障局の管轄なんだ。クビをつっこまないほうがいい。…この宇宙が見る夢がどんなものなのか、僕も、それは見たいとは思うけどね

沢渡佐由理:そこはずっと遠くの宇宙からやってきたような冷たく深い風が吹いていて、空気には違う宇宙の匂いがしました。空と、雲と、崩れた街…。どこまで歩いても、誰もいない。寒い…。わたし、どうしてこんなところにいるの?だれか、ねぇだれか…ヒロキくん。

藤沢浩紀:また、あの夢だ…。
藤沢浩紀:ヴェラシーラを、結局、僕たちは飛ばさなかった。3年前、サユリが僕たちに何も言わないで消えてしまったことはそれなりにショックだったし、そのことで飛行機作りをやめてしまった自分たち自身にも、僕たちは腹を立てていたのだと思う。中学卒業後、タクヤ青森県内の高校に進学し、僕は東京の高校に来た。東京まで来ればユニオンの塔は見えなくなると思ったからだ。でもそれは期待はずれで、時々、天気はいいと東京からも塔はかすかに見えた。そういう日、僕は1日、暗い気持ちに支配された。

水野理佳:この戦車、藤沢君のふるさとまで行くんだよね?
藤沢浩紀:ああ、そうだな
水野理佳:ね、こうゆうのってゆっくりで飛び乗れそうじゃない?二人で青森まで密航しようか?

藤沢浩紀:時々、岡部さんからは近況を知らせる手紙が届いた。返事は、一度も出していない。部屋にたどり着いてドアを閉めるたび、まるで体中の骨が皮膚を突き破るような激しい心の痛みを感じる。いつのまに、僕はこんなものを抱え込んでしまったのだろう。

藤沢浩紀:一人暮らしの夜は長く感じた。上手く時間をやり過ごせないときは、僕は近くの駅まで歩き、誰かを待っているフリをしながら時間をつぶして、それにも飽きると、部屋までの帰り道をなるべくゆっくりと歩いた。高校に友達はいたけれど、制服を着ている時以外は、どうしてかあまり一緒にいたいと思えなかった。3000万以上の人間が暮らす街で、考えてみれば、会いたい人も話したい人も、僕には誰もいなかった。そういう日々の中で、時々、サユリの夢を見た。それはどこか冷たい場所に一人きりでいるサユリを必死で探す夢で、結局いつも、サユリの姿は見つからなかった。ただ、心をふるわすようなサユリの気配だけは、目が覚めてからも体にのこっていた。気が付けば、東京に来てから3度目の冬だ。まるで、深く冷たい水の中で息を止め続けているような、そんな毎日だった。僕だけが…。

沢渡佐由理:私だけが、世界に一人きり、とりのこされている、そんな気がする。

白川拓也:俺、いつか蝦夷にくることは夢だったんですよ。あっけなく来れちゃうもんですね
アニキ:ここはほんの南端だけどな。ユニオン側に家族でもいるのか?
白川拓也:そういわけ訳じゃないんですが
アニキ:お前は分断後の世代だからな。憧れる気持ちも分らなくはないよ。社長なんかは南北分断で家族と別れてるからな、また別の気持ちがあると思うぜ
白川拓也:え、そうなんですか?
アニキ:でも意外だったよ
白川拓也:え?
アニキ:社長がお前を巻き込むとは思わなかった
白川拓也:おれが無理やり頼み込んだんです
白川拓也:連れてってくれなきゃ、公安にタレ込むって言って
アニキ:オマエ危ないこと…

佐藤or宮川:社長!
岡部:冗談じゃねぇぞ。まったくマヌケな役人だぜ。内通がバレたんだ。出してくれ!
佐藤or宮川:今回はちょっと危なかったですね
岡部:まあ、お陰で侵空のメドがついたぜ。ここまで来た甲斐もあったってもんだ、なぁ
佐藤or宮川:社長!船がいます!巡視船です!
岡部:どうせ開戦は決定済みだってのにマジメに働きやがって…マズいな、振り切ってくれ!
総舵手:はい!
岡部:国境まであと3分だ。佐藤!宮川!銃座に出てくれ!

岡部:タクヤ!大丈夫か、タクヤ

沢渡佐由理:あの翼…私知ってる…

藤沢浩紀:目を覚まし、一瞬、自分がどこにいるのかよくわからなくなる。僕はもしかして間違えた場所に来てしまったのではないかと、時々思う。今では、サユリの夢の方を現実よりも現実らしく感じている。

藤沢浩紀:入院先?

藤沢浩紀:サユリ…

【サユリの手紙】
ヒロキくん、タクヤくん。
二人の前から黙っていなくなってしまったこと、ごめんなさい。
夏休みを一緒に過ごしたかったのに残念です。
目が覚めたとき、私は東京の病院にいて、それからずっと入院しています。
病院の人には、今までの関係は一切断ち切るべきだからといわれていたのですが、
どうしてもとお願いして、今これを書いています。
二人に読んでもらえるように岡部のおじさん宛てに送ります。
でも、何を書いたらいいかよくわかりません。
何度も同じ夢をみます。
誰もいないがらんどうの宇宙に私ひとりだけがいる夢。
その夢の中では私の全部、指や頬、爪やかかとや、髪の毛の先までが、寂しさに強く強く痛がっています。
3人で過ごしたあのぬくもりに満ちた世界。
あの頃のほうが、まるで夢だったみたいです。
でもあの頃の思い出さえなくさなければ、もしかてわたしはこの先…ほんのわずかでも現実につながっていられるかもしれないって、そう思っています。

藤沢浩紀:転院したんですか?
看護師:はい、1週間ほど前に。詳しくは移送先の病院に聞いていただけますか
藤沢浩紀:はい…、あの、沢渡さんの入っていた病室って…

沢渡佐由理:ヒロキくん、タクヤクン。あの白い綺麗な飛行機は、海の向こうのあの塔まで無事に飛びましたか?

藤沢浩紀:なんだろう…夢と、同じ空気だ…。沢渡…そこに、いるのか…?

藤沢浩紀&沢渡佐由理:ずっと…
藤沢浩紀&沢渡佐由理:ずっと、探していた

藤沢浩紀:沢渡、俺、今度こそ約束をかなえたいんだ。沢渡を塔まで乗せてヴェラシーラを飛ばすよ。そうすれば僕たちはまた会えるって気がするんだ。ねえ、もう一人にはしないよ、僕はもう何も諦めない。ずっと沢渡を守るよ、約束する。
沢渡佐由理:うん…約束
藤沢浩紀:一緒に、塔まで飛ぼう

笠原真希:先生!来てください!
有坂:塔の稼動レベルが急に上昇したんです。異相変換の範囲が急激に広がっています
笠原真希:同じタイミングで対象の意識レベルも上昇しているんです。目が覚める前兆かもしれません。これってやっぱり…
有坂:異相変換の半径20kmを超えました!
富澤常夫:これは…世界を書き換えるつもりなのか…?
笠原真希:対象の意識レベルが低下に転じました
有坂:異相変換のスピードも低下、停止します
笠原真希:半径約26㎞までの範囲が平行宇宙と書き換わりました
有坂:対象の意識レベルも通常の水準まで落ちています。睡眠、再び安定しつつあります
笠原真希:富沢先生…
富澤常夫:うん…やはり対象の眠りが塔の活動を抑えていた鍵だったんだ。塔の捉える平行宇宙の情報は、周囲の空間を侵食するかわりに今は対象の夢に流れ込んでいる。沢渡サユリには、夢を見続けていてもらうしかない

藤沢浩紀:ただ…、夢を見ていたのかもしれない。それでも、肌に触れたサユリのぬくもりは、僕の体を温め続けていた。今はもう、遠いあの日。僕たちは、かなえられない約束をした。

沢渡佐由理:ねえ、タクヤくん。おかしな話かもしれないけど、笑わない?
白川拓也:え、なに?笑わないよ
沢渡佐由理:じゃあ話すね。あのね、最近よく見る、夢の話
白川拓也:高い塔?ユニオンの塔みたいな?
沢渡佐由理:ううん。もっといびつで…不思議な形。私のいる塔の他にもそういうのが周りにはいっぱい建ってて。私にはなぜか分るんだけど、その一つ一つが別の世界、この宇宙のみている夢なの。私はずっとその場所からでることが出来なくて、ずっと一人きりですごく寂しくて…。それでね、もう、きっとこのまま消えちゃうんだろうなっていう時にね、空に白い飛行機が見えるの
白川拓也:飛行機?
沢渡佐由理:うん
白川拓也:それから?
沢渡佐由理:夢はそこでおしまい

笠原真希:よかった!白川くん、目が覚めたのね
白川拓也:マキさん…
笠原真希:心配したんだから
白川拓也:あの、どうして…
笠原真希:まだ肩は痛む?
白川拓也:いえ…
笠原真希:ちょっとゴメンね。熱も下がったみたい。ね、お腹すいてない?何か食べる?りんごとバナナと、あとケーキも買ってきちゃった!どれがいいかな…

富澤常夫:白川君のIDじゃ入れないよ
富澤常夫:怪我はもういいの?
白川拓也:あ、はい。すみません、ご心配をおかけして…あの…
富澤常夫:マキちゃんから聞いたんだって?会っていくかい?

富澤常夫:眠り続けるのは、塔から流れ込む平行世界の情報に彼女の脳が耐えられないからだと推測されてる。もし彼女の眠りが破られれば、塔を中心に、世界は瞬く間に平行宇宙に飲み込まれることになると思うよ。…もっとも、どうしたら彼女を目覚めさせること出きるのかも我々には分からないんだけどね
富澤常夫:開戦を控えて数日中に本国のNSA本部へ移送されることが決まったよ。この分野で大きく立ち後れている連合にとっては、彼女は貴重なサンプルなんだ
白川拓也:…どうして、沢渡なんでしょう
富澤常夫:分かっていないことのほうが多いが、たぶん、偶然ではないと思う。塔の設計者であるエクスン・ツキノエは彼女の祖父だ

岡部:聞いたとおり、もはや塔は明らかに兵器だ。この25年日常の風景にどうかしたあの塔はあらゆるものの象徴だった。国家や戦争や民族、あるいは絶望や憧れ、その受けとめ方は世代によっても違う。だが、誰もが手の届かないもの、かえられないものの象徴としてみているという点では同じだし、そうおもっている以上この世界は変わらないだろう。3日後の早朝に、ユニオンに対しアメリカ政府から宣戦布告が行われる。その開戦の混乱に乗じ塔への爆破テロを行う。無人プレデター蝦夷に侵攻、攻撃にはPL外殻爆弾を載せたシーカーミサイルを使う。ウィルタ解放戦線は同日解散、この工場も今日で閉鎖だ

白川拓也:ああ、ああ。わかった、じゃあ明日な

白川拓也:よお。
藤沢浩紀:3年ぶりだな、タクヤ

白川拓也:いつ来たんだ?
藤沢浩紀:おととい。今は廃駅に泊まりこんでるんだ。
白川拓也:廃駅に?
藤沢浩紀:うん、タクヤさ、その腕どうしたんだ?
白川拓也:ああ、ちょっとな。
藤沢浩紀:なんだよ、ちょっとって。
白川拓也:後で話すよ。

藤沢浩紀:今日も休みなのかなぁ…お、チョビ、元気だったか?久しぶりだな

白川拓也:ヴェラシーラを飛ばす?沢渡を乗せてか?
藤沢浩紀:うん。組み立てはあと一日もあれば終わるよ。あとは…制御ソフトの問題だけど…
白川拓也:待てよ。おまえ、俺の話聞いてたのか?沢渡は眠り続けてるし、塔は…
藤沢浩紀:塔は、テロの標的になってるんだろ?だからタクヤの助けが必要なんだよ。
言っただろ、ずっと考えていたんだ。塔まで一緒に飛べば沢渡は目覚めるとおもうんだよ
白川拓也:お前…そんなことのために帰ってきたのか?
藤沢浩紀:そ、そんなことって…、約束したじゃないか、俺たち。沢渡の夢を見るんだ。何度も繰り返し。沢渡は誰もいない場所に一人でいて、何も思い出せないって言ってた。でも、あいつ約束のこは覚えている。夢でもう一度約束したんだよ、今度こそ塔へ連れていくって。あれが…ただの夢とは思えないんだ
白川拓也:今更のこのこやってきて、何かと思えば夢の話か。お前を見ていると苛々するよ。ガキの遊びにつきあってるほどヒマじゃないぜ。いつまでもこんなモノに執着してるからだ。オレが忘れさせてやるよ
藤沢浩紀:やめろーー!

藤沢浩紀:タクヤ
白川拓也:サユリを救うのか、世界を救うのかだ。

藤沢浩紀:あっ、ちょっと忘れ物しちゃってさ
沢渡佐由理:そうなんだ
藤沢浩紀:沢渡、帰らないのか?
沢渡佐由理:あ、うん帰るよ
沢渡佐由理:ヒロキ君、どうしたのほっぺ?
藤沢浩紀:あ、ちょっとタクヤとケンカしてさ
沢渡佐由理:だいじょうぶ?
藤沢浩紀:だいじょぶ、だいじょぶ。きっとすぐ仲直りするんだ、多分

藤沢浩紀:じゃあな、お休み
沢渡佐由理:ヒロキ君、ね、駅まで行くの?

沢渡佐由理:いつも予感があるの…、何かをなくす予感。世界は本当にきれいなのに、私だけがそこから遠く離れちゃってる気がするんだ

藤沢浩紀:でも、僕にはその時、サユリが輝く世界の中心にいるように見えたんだと思う。…ああ、そうか。今、とても大切ことが、なにか、わかった気がしたのに。

藤沢浩紀:すいません、誰かいませんか!岡部さん!ヒロキです、岡部さん!
藤沢浩紀:…連絡先だけでも

藤沢浩紀:うわっ!
岡部:…やっぱりヒロキか。でかくなったな
藤沢浩紀:お、岡部さん。あの、これって…
岡部:タクヤに聞いたぜ。覚悟のほどを、見せてもらおうかな。オマエ達で、塔を壊せよ

笠原真希:爆破テロの噂、本当かしら?
白川拓也:どうでしょうか。ただ開戦はもう目前だろうし、そうなれば塔の研究どころじゃなくなるかもしれません。結局、ツキノエがしていることも、ウィルタのようなテロ組織がしていることも、南北分断への抗議って意味では同じことなんじゃないかって気がします。
笠原真希:白川くんて、ちょっと不思議よね。なんだか秘密が多いみたい
白川拓也:いえ、そんなこと
笠原真希:ごめん、お茶入れるね。それから、傷、手当てさせてね

笠原真希:白川くん、最近傷だらけだね
白川拓也:すみません
笠原真希:何か大変なこととか、あるの?
白川拓也:いえ、大丈夫です、すみません…

白川拓也:…そいつ、一番の友達だったんです
笠原真希:え?
白川拓也:ケンカの相手です。同じことに憧れて、同じものを目指してました
笠原真希:うん…
白川拓也:でも別々の場所に進んで、何て言うか、俺はどこに向かっていけばいいのか分らなくて。わけのわからない力や衝動はそれでも体の中から溢れてくるのに。
笠原真希:うん
白川拓也:だから、この研究室に入れてすごく安心したんです。やるべきことが見つかったような気がして。それに…。マキさんに出会えたことも、嬉しかった。だから、あなたを巻き込みたくないんです。どうしてもやらなきゃいけないことがあるんです。全部終わったら、俺、もう一度マキさんに会いたいです
笠原真希:白川くん!

白川拓也:沢渡…今度こそ約束の場所に行こう。

富澤常夫:どういうことだよ岡ちゃん、子供をそんなことに利用するのか?
岡部:あいつらが望んだんだぜ。それに塔の周りはもともと平行宇宙とやらに飲み込まれてるんだろ。人死にはでねよ
富澤常夫:だからってそんな…
岡部:まぁ落ち着けよ富沢。それに、帰ってくる頃にはあいつらも子供じゃないさ。お前が今何を考えていこと、当てようか?
富澤常夫:…やれやれ
岡部:じゃあな、切るぜ。いよいよ大詰めか…

岡部:サユリちゃん、ほんとにそれで目覚めるのか?
白川拓也:俺も、なぜか今は確信があるんです。あの日の約束が、多分沢渡の現実への絆なんです。今も夢の中でヴェラシーラをずっとまってる。俺もヒロキもそれをどこかで感じ続けていたような気がします。ヴェラシーラは二人乗りだし、この腕じゃ操縦は出来ないから、俺は残って塔の行方を見届けます
岡部:冷えると思ったらまた降ってきやがった
白川拓也:それじゃ、行きます
岡部:ああ。まぁアレだ、久しぶりのコンビなんだから、仲良くやれよ!

藤沢浩紀:どれだ?…これか?

白川拓也:岡部さんからきいたか?
藤沢浩紀:あぁ…

藤沢浩紀:タクヤBIOSはどのバージョンを使えばいいんだよ?途中でラダーの位置変えただろ、それ以降のが無いんだ
白川拓也:この中だ。シーカーミサイルぶんも入ってるから。あと何が残っているんだ
藤沢浩紀:超伝導モーターの配線が少し、あとソフトと微調整だけだよ
白川拓也:宣戦布告予定まであと5時間、その後の開戦に紛れて飛ぶしか手はないからな。ソフトは俺がやるから、ヒロキは配線を仕上げてくれ
藤沢浩紀:ああ。それからタクヤ!なんだよあのエラーメッセージ
白川拓也:え?
藤沢浩紀:バージョンチェックの
白川拓也:バージョンチェック?ああ、そこ、お前がくんだとこじゃないか?3年前に
藤沢浩紀:あれ、そうだっけ?
白川拓也:相変わらずだな…。バカ

白川拓也:ヒロキ!ちょっと見てくれ
藤沢浩紀:なに?
白川拓也:津軽沖での戦闘状況予測が出たんだ
白川拓也:だいたい予想通りだ
藤沢浩紀:前線は42度線あたりまでか…。内陸部、特に塔の周辺はがら空きだね
白川拓也:地上は侵食が進んでいるからな。どう行く?
藤沢浩紀:海峡を抜けるまではジェットで低空をすり抜けて、42度線を抜けてココのヤマにさしかかkったあたりで高度をとって巡航飛行…こんな感じでどうかな?
白川拓也:そうだな、他にやりようもなさそうだ。塔に着いたら沢渡の目覚めと前後して、地上の位相変換が再開する筈だ。
そうなったらすぐに離脱して、塔から10km以上離れたらシーカーミサイルを飛ばしてくれ。自律飛行で塔まで飛ぶようにしてあるから、それで全て終わりだ
藤沢浩紀:ああ
白川拓也:開戦まではまだ二時間近くある。思ったより早く仕上がったな
藤沢浩紀:うん
白川拓也:…ヒロキ
藤沢浩紀:ん?
白川拓也:もしかして、お前ヴァイオリン弾けるのか?

白川拓也:それにしてもさ、バカみたいに一途だよなぁ、オマエって
藤沢浩紀:余計なお世話だぜ、オマエが頼んだんじゃねぇか
白川拓也:こっち向いてやれよ
藤沢浩紀:うるさいなぁ!黙って聴けよ!
白川拓也:ははっ

沢渡佐由理:目覚めの予感に、体がふるえているのがわかる。どうしてだろう、今は、期待よりも恐れの方が強い。

藤沢浩紀:いつも何かをなくす予感があると、サユリはそう言った。いま、僕もかすかに同じ予感を感じる
藤沢浩紀&沢渡佐由理:でも
沢渡佐由理:いつかの放課後の約束、あの塔まで、私は行くんだ。

笠原真希:塔の稼動レベル、再び上昇!分岐宇宙の侵食範囲、広がりつつあります。
有坂:現在半径36キロ、毎時0.4キロでゆっくりと拡大中です。
富澤常夫:目覚めの予兆に反応しているのか?大丈夫なんだろうな、岡ちゃん。
笠原真希:先生!いま、宣戦を布告がなされました。まもなく津軽沖で最初の衝突です。

藤沢浩紀:陸だ!

藤沢浩紀:ねぇ、サユリ…。約束の場所だよ。
沢渡佐由理:あの翼…、ヴェラシーラ。
沢渡佐由理:あぁ、夢が消えていく。ああ、そうか…、私がこれから何をなくすのか、わかった。
沢渡佐由理:神さま。
藤沢浩紀:神さま、どうか…。
藤沢浩紀:サユリを、眠りから覚まさせてください。どうか…。
沢渡佐由理:おねがい、目覚めてから一瞬だけでもいいの。今の気持ちを消さないでください。ヒロキくんに私は伝えなきゃ、私たちの夢での心のつながりがどんなに特別なものだったか。誰もいない世界で、私がどんなにヒロキくんを求めていて、ヒロキくんがどんなに私を求めていたか。
藤沢浩紀:サユリ
沢渡佐由理:お願い。私が今まで、どんなにヒロキくんのことを好きだったか、それだけを伝えることが出来れば、私は他にはなにもいりません。どうか一瞬だけでも、この気持ちを…
藤沢浩紀:サユリ?
沢渡佐由理:藤沢君…

笠原真希:異相変換、急速に拡大!蝦夷が、のみこまれていきます!

藤沢浩紀:サユリ?
沢渡佐由理:わたし…
沢渡佐由理:わたし何かあなたにいわなくちゃ…とても大切な…消えちゃった…
藤沢浩紀:大丈夫だよ、目が覚めたんだから。これから全部、また…
藤沢浩紀:おかえり、サユリ


藤沢浩紀:約束の場所を失くした世界で、それでも…、これから僕たちは生き始める。

 

 

END

 

 

後日談:その後の話は小説より

・藤沢浩紀と沢渡佐由理の関係

佐由理が浩紀に依存してしまうことを危惧して、お互いに分かれることを決意。

それぞれの人生を生きていく。

 

夢の記憶を持ったままの浩紀と、夢の記憶を忘れた佐由理には、同じ感覚で生きていける現実はなかった。

夢があのまま続いていれば、心はつながったままだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

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